かつては通勤カバンに文庫本を入れて、電車の中で何十ページも読んでいた。今は、同じ電車でスマホを握ったまま、SNSを上から下へ流している。
久しぶりに本を開いても、数行で集中が切れる。気づけばまた、手がスマホに伸びている。あんなに読めていたはずなのに、なぜだろう。
多くの人が、この変化を自分のせいにします。集中力が落ちた、記憶力が衰えた、歳を取った、意志が弱い。そう考えて、静かに落ち込んでいませんか。
でも、あなたの読む力が失われたわけではありません。原因は能力ではなく、脳の使い方が変わってしまっただけ。そしてそれは、元に戻せます。この記事では、スマホで本が読めなくなる仕組みと、読める脳を取り戻す道すじをお伝えします。
この記事の執筆・監修
浦地純也(うらち じゅんや)
速読メソッド「GSR」講師 / 株式会社ManaBeラボ 代表取締役

- 株式会社ManaBeラボ代表取締役
- 中学校、高等学校理科教員免許
- 国際ジェネラティブチェンジ協会ジェネラティブトランス修了資格
- カリフォルニア大学発祥の心理学指導者資格
2013年、高知大学で理科教員免許を取得し、公立の高等学校で2年間理科教師として働く。その後速読に感銘を受け愛知県で速読教室と学習塾を開校。
その後、スタンフォード大学心理学博士のギリガン先生と出会い、「瞑想状態×速読」を用いた新しい速読メソッド【GSR(Generative Speed Reading)】をワールドクラスパートナーズ株式会社と開発。
2019年には、「人生を変える速読法 GSR」を出版。2025年までの10年間で44,000人以上への速読指導の実績。現在もオンラインで全国の人々へ向けて活動中。
なぜスマホを持つと本が読めなくなるのか

スマホのせいだという感覚は、たぶん当たっています。ただ、スマホが具体的に何をしているのかを知ると、対処のしかたが変わります。
犯人は、あなたの集中力ではありません。スマホは、あなたの読み方そのものを、静かに書き換えているんです。
断片的にスキャンする読み方に脳が最適化される
一日のうち、私たちが文字を読む時間の大半は、もうスマホの中にあります。SNS、ニュースアプリ、チャット。そこに流れてくる文章の読み方を、思い出してみてください。
上から下へ、ざっと視線を走らせる。気になった言葉で少し止まり、興味がなければ指でスワイプする。1つの文章をじっくり最後まで追うことは、ほとんどありません。
画面には、情報が洪水のように流れ込んできます。全部をていねいに読んでいたら、とても追いつきません。だから脳は、拾い読み・すくい読みに最適化されていきます。
この読み方は、スマホの中では効率的です。大量の情報から必要なものを素早く選べます。問題は、この読み方が本にも持ち込まれてしまうこと。
本は、著者の主張が何十ページもかけて積み上がっていく旅のようなものです。ところが、スキャン読みに慣れた脳は、1ページ目から拾い読みをしようとします。文脈が積み上がらないので、内容が入ってこない。数行で飽きて、まだスマホに手が伸びる。
ちなみに、SNSをつい開いてしまうのも、あなたの意志の弱さだけの問題ではありません。次こそおもしろいものが来るか、という期待感で脳内にドーパミンが出続ける。脳の仕組みを理解したうえでそうさせるように設計されているからです。
スマホ脳疲労で情報処理そのものが落ちる
読み方が変わるだけではありません。長時間スマホに触れ続けると、脳の情報処理そのものが落ちていきます。
デジタル機器から絶え間なく情報が流れ込むと、脳の司令塔である前頭前野が処理しきれなくなります。これが積み重なった状態を、脳過労(スマホ脳疲労)と呼びます。集中力・記憶力・意欲が同時に下がるのが特徴です(大正健康ナビ)。
東北大学の榊浩平先生も、スマホの使いすぎが思考力を奪うと指摘しています。大切なのは完全に断つことではなく、デジタルとアナログを使い分けることだと述べています(サイボウズ式)。
実際、ショート動画を2〜3時間見続けると、長い映画を最後まで見られなくなる。そんな経験はないでしょうか。スマホに触れる時間が長いほど、深い集中は失われていきます。これも、あなたの能力そのものが落ちたというより、脳がスマホのペースに適応してしまった結果です。
読めなくなったのは意志や老化のせいではない

ここまで読んで、それでもこう思うかもしれません。理屈はわかった、でも結局、自分の意志が弱くて、歳を取ったからではないか、と。
先に、はっきりお伝えします。これは、あなた個人の劣化ではありません。いま、社会全体で同じことが起きています。
注意の持続時間は社会全体で47秒まで落ちている
証拠になる、はっきりしたデータがあります。
人の注意がどれだけ続くかを、20年以上にわたって計測してきた研究者がいます。カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者、グロリア・マーク教授です。
その計測によると、パソコンやスマホで1つの画面に注意を向け続ける時間は、年々短くなっています。2004年には平均2.5分ありました。それが2012年には75秒に。近年ではおよそ47秒まで落ちています(グロリア・マーク教授の研究/Steelcase)。
20年足らずで、3分の1以下です。これは特定の誰かの話ではなく、計測に参加した人たち全体の平均。つまり、社会全体で注意の持続時間が短くなっているということです。
私たちみんなが、そういう環境に置かれているんです。
中断から元の集中に戻るまで23分かかる仕組み
もうひとつ、同じ研究から重要な数字があります。
一度別のことに気を取られると、元の作業に戻るまで、平均で23分15秒かかるというものです(グロリア・マーク教授の研究/Steelcase)。
想像してみてください。本を開いて、ようやく内容に入り込みかけたところで、スマホの通知が光る。ちらっと見て、SNSを少し開いて、また本に戻る。
このとき脳は、たった数十秒スマホを見ただけでも、さっきの集中を取り戻すのに20分以上かかるということになります。
これでは、読み込めなくて当たり前です。あなたの集中力が壊れたのではなく、集中が育つ前に途切れさせられているだけなんです。
つけ加えると、集中が続かないことを年齢や能力のせいにして自分を責めると、かえって脳の働きは落ちます。自分を責める思考そのものが、脳のノイズになるからです。まず、自分のせいにするのをやめる。そこが出発点になります。
読む力は消えたのではなく使っていないだけ
一度こうなった読む力は、もう戻らないのか。
答えは、戻せます。読む力は消えていません。
ただ、取り出しにくい奥の方へしまい込んでしまっているだけなんです。
深く読む脳の回路は使われていないだけで残っている
これは、感覚的ななぐさめではありません。読む脳の研究から言えることです。
読む脳の仕組みを長年研究してきた、認知神経科学者のメアリアン・ウルフという人がいます。著書『Reader, Come Home』の中で、こう説明しています。
人が文字をスクロールしたりスキャンしたりすることに慣れていくと、深く読むための脳の回路が使われなくなり、弱っていく(メアリアン・ウルフ『Reader, Come Home』)。ここまでは、これまで見てきた話と重なります。
一字一句を追い、著者の論理をたどり、自分の考えと照らし合わせる。こうした深い読み(ディープ・リーディング)は、生まれつき備わった能力ではありません。読書をくり返すことで、後から脳の中につくられた回路です。
大事なのは、ここからです。ウルフは、この回路は消えてしまうのではない、と言います。使われずに眠っているだけで、意識的に使えば、また働きはじめるのだと(The Conversation)。
意識的なトレーニングで読む脳は育て直せる
なぜ、いったん弱った回路が戻るのか。脳には、使い方しだいで変化する性質があるからです。
よく使う機能は強くなり、使わない機能は鈍る。これは筋肉と似ています。しばらく運動をやめれば筋力は落ちますが、また動かせば戻ってきます。読む脳も同じで、深く読む時間を取り戻せば、回路はまた働きはじめます。
実際、こんな話があります。
スマホの電源を切っただけで、また本が読めるようになった。
情報と通知に疲れていただけで、脳を休ませたら、すっと文字が入ってきた。
読む力そのものが失われていたわけではなかった、という声です。
だから、あなたがいまやるべきことは、失った能力を一から鍛え直すことではありません。眠っている回路を、もう一度使いはじめること。年齢は関係ありません。脳は、いくつになっても変わります。
その回路をもう一度使うための具体的な方法のひとつが、私が教えている速読法GSRです。読む脳を育て直すトレーニングがどんなものか、速読法GSRの解説でまずは軽くのぞいてみてください。
読む脳を鍛える一歩目はスマホとの付き合い方
読む脳を使いはじめると決めたら、最初の一歩があります。いま読む力を奪い続けている環境に、先に手を打つことです。
ここで多くの記事は、スマホをやめましょう、と言います。
でも、そうは言いません。現実的ではないし、その必要もないからです。
大切なのは、スマホをやめることではなく、コントロールされる側から、コントロールする側に回ること。スマホは、賢く使えばとても便利な道具です。
そのためのポイントが3つあります。
1.スマホを使う目的を決める
ひとつ目は、使う目的を持つことです。
問題は、スマホそのものではありません。無目的に開いて、気づいたらショート動画を2時間見ていた、という使い方です。あの後に残るのは、時間を無駄にしたという後悔だけ。
そこで、スマホを開く前に目的を決めます。調べたいことがあるから検索する。学びたいことがあるから、その動画を見る。目的があれば、だらだらとした時間は自然に減っていきます。
2.使う時間をあらかじめ設計する
ふたつ目は、使う時間帯を決めておくことです。
たとえば、
朝はニュースや学びのインプットに使う。
昼休みの15分は、好きな漫画や動画を楽しむ。
夜は、リラックスのために瞑想アプリを開く。
こんなふうに、時間帯ごとに使い方を決めます。
この時間はこれを見る、と決めるだけで、自分でコントロールしている感覚が戻ります。スマホに使われるのではなく、スマホを使う側に立てるんです。
3.ネガティブになる使い方を避ける
3つ目は、見たあとに嫌な気持ちになるものを、習慣から外すことです。
SNSには、他人と自分を比べて落ち込ませる投稿や、不安をあおるニュースがあふれています。見たあとに、なんだか気分が重いな、と感じるもの。それは、少しずつ習慣から取り外していきます。
意外なことに、スマホは手元にあるだけで集中を削ぐことがわかっています。
2017年のアメリカの大学の研究では、スマホを別の部屋に置いた人のほうが、テストの点が高い傾向にありました。見ていなくても、そこにあるだけで注意力の部が奪われるというものです。
読書に限らず、何かに集中したいときはスマホを視界の外に置くと効果的です。
「速読法GSR」で読む脳の状態を作り直す
スマホをコントロールする側に回る。この土台の上に、読書のための脳の状態づくりを体系化したのが、私が教えている速読法GSRです。
なぜ速読の講師がここまでスマホと脳の話をしてきたのか。それは、GSRが単に速く読む技術ではなく、読むための脳の状態を作り直すトレーニングだからです。
休むだけでは脳の疲れは消えない
その前に、ひとつ知っておいてほしいことがあります。集中して読めないのは、脳が疲れているからでもあります。そして、その疲れは、寝るだけでは取れません。
意外に思うかもしれませんが、脳には、何もしていないときほど活発になる回路があります。神経科学でDMN(デフォルトモードネットワーク)と呼ばれる、脳のアイドリング状態です。
この回路は、ぼんやりしている間に、過去の後悔を思い出したり、未来の不安を先回りしたりします。脳が使うエネルギーの7〜8割が、この何もしていないときの空回りで消費されるといわれています。
だから、休日にたっぷり寝ても、頭のもやもやは晴れません。体の疲れは取れても、脳のノイズは動き続けているからです。集中して読むには、このノイズを静める必要があります。
「速読法GSR」は読書のための脳の状態を作るトレーニング
速読法GSRは、スタンフォード大学の心理学博士スティーブン・ギリガン先生らが開発した、ジェネラティブという瞑想状態と、最新の脳科学を組み合わせたメソッドです。これまで44,690人以上が体験し、小学4年生から82歳まで効果を実感しています。
GSRでは、本を読む前に1分間の瞑想を行います。姿勢を整え、軽く目を閉じて、呼吸に意識を向ける。雑念が浮かんでも、追い払わず、気づいてそっと手放す。それだけです。読みながら気を紛らわせるものではなく、読み始める前に脳の状態を切り替えるための読書のための瞑想です。
これをくり返すと、脳の状態が、深いリラックスと集中が同居したモードに切り替わります。散らかっていた脳の作業机が片づき、文字を受け取る余白が生まれる。この状態を作ってから読むと、同じ本でも入り方がまるで違います。
正直にお伝えすると、GSRで脳の疲れが一瞬で消える、という話ではありません。読書のための脳の状態を、自分で作れるようになる。そういうトレーニングです。
ついでに、読書そのものにも意味があります。
脳科学者の毛内拡先生によれば、読書は脳の広い範囲をバランスよく使える、運動のほかにはめずらしい優れた行為だそうです。受け身で眺めるだけのスマホや動画とは、脳の使われ方が根本から違います。だからこそ、読める脳を取り戻す価値があるんです。
速読法GSRで読む力を取り戻した受講者の声
とはいえ、本当に自分のような状態から変われるのか。そこが、いちばん気になるところだと思います。
これから紹介する3人に共通するのは、以前は読めていた、あるいは読もうとして挫折した経験を持つ点です。かつての読む力を失ったり、頑張ったのに変われなかったりした人たちが、そこから読む力を取り戻しています。

GSR式速読を学び、494文字/分→146,300文字/分まで読めるようになりました。100倍以上のスピードアップをして、昔は年間1冊くらいしか本を読まなかったのですが、今では年間600冊以上の本を読んでいます。
その結果、患者さんの訴えていることの表面的な言葉だけでなく、裏の意味まで読み取れるようになって治療の質が上がりましたし、患者さんが増えてビジネス面での成果にも繋がりました。そして、本の知識を元に、学会で発表することもできました。

通信の速読を過去に受け、がんばったにも関わらず全く効果を感じることなく挫折。今では、10分で本を読み本の要点をつかむことができるようになりました。速度は、約50倍です。
2020年10月には、1ヶ月に16冊の本を読破。1年かかっていた読書数をわずか1ヶ月で超えました!やっぱり読書は大事と改めて実感。この読書で得た知識を活かして、ピアノの先生向けの新しい講座をスタート。毎回満席で、ご好評いただいています。

昔、速読に100万円以上を投資したにも関わらず習得できず挫折。速く読めた気になっているだけで、理解は全くできていない状態でした。しかし、GSRでは1分間に1万文字以上(日本人平均は500文字/分)を読み、アウトプットすることができました。
72歳にして、速読のリベンジ達成です!おかげさまで目標だった1年間で500冊読破にも成功しました!
挫折を経験した人ほど大きく変わるのには、理由があります。読む力そのものが失われていたわけではなく、脳の使い方が合っていなかっただけだからです。合ったやり方に切り替えたとたん、眠っていた力が動きはじめる。
GSRの本講座を受講した方の読書速度は、中央値で20.68倍に伸びています。
そして96%が、1冊の本を10分で読んで内容を人に説明できるようになりました。
同じ変化は、あなたにも起こり得ます。もし、自分も読む力を取り戻したいと感じたなら、速読法GSRの中身を詳しく見てみてください。

本が読めなくなったことに関するよくある質問
- なぜスマホを持つと本が読めなくなるのですか?
-
脳がスマホ的な拾い読みに慣れ、深く読む回路を使わなくなるからです。加えて、長時間の使用で脳が疲れ、情報処理そのものも落ちます。集中力や記憶力が下がったのは能力の問題ではなく、脳がスマホのペースに最適化された結果です。使い方を変えれば戻せます。
- 一度読めなくなった読む力は戻りますか?
-
はい、戻せます。認知神経科学者メアリアン・ウルフによれば、深く読む脳の回路は消えるのではなく、使われずに眠っているだけです。脳は使い方しだいで変化するため、深く読む時間を意識的に取り戻せば、回路はまた働きはじめます。年齢は関係ありません。
- 本を読むには、スマホをやめるしかないのですか?
-
いいえ、やめる必要はありません。大切なのは、コントロールされる側から使う側に回ることです。使う目的を決める、時間帯を設計する、嫌な気持ちになる使い方を手放す。この3つで十分です。ただし読書中だけは、スマホを視界の外に置くと集中しやすくなります。
- 集中が続かないのは、歳のせいや意志の弱さではないのですか?
-
違います。カリフォルニア大学アーバイン校のグロリア・マーク教授の計測では、画面への注意持続時間は社会全体で2004年の2.5分から近年の47秒まで短くなっています。これは環境の変化であって、個人の劣化ではありません。自分を責める必要はありません。
- 速読を覚えると、内容が頭に入らなくなりませんか?
-
いいえ。速読法GSRは、ページをめくるだけの飛ばし読みではありません。頭の中の音読をやめ、文字を見て理解する読み方です。目指す理解度は要点をつかむ30〜60%。記憶は思い出した回数で定着するため、要点をつかむほうがかえって頭に残ります。
- まず何から始めればいいですか?
-
読書の時間だけ、スマホを別の部屋に置くことから始めてみてください。そのうえで、本を開く前に1分だけ目を閉じて呼吸を整えると、脳が読む状態に入りやすくなります。特別な道具も、まとまった時間もいりません。小さな一歩からで十分です。
まとめ
昔は読めたのに、スマホを持ってから本が読めなくなった。その原因は、あなたの集中力や記憶力、意志や年齢ではありません。
脳がスマホ的な拾い読みに慣れ、深く読む回路を使わなくなっただけです。注意が続かないのも、社会全体で起きている現象でした。だから、自分を責める必要はありません。
そして、いちばん大事なこと。あなたの読む力は、消えていません。使われずに眠っているだけです。深く読む回路は、意識して使えば、また働きはじめます。
一歩目は、スマホをやめることではなく、賢く使う側に回ること。そのうえで、読書のための脳の状態を作り直していく。その方法を体系化したのが、速読法GSRでした。
今この記事を読んでいる時点で、あなたはもう、読む力を取り戻す一歩を踏み出しています。焦らなくて大丈夫。まずは、速読法GSRの仕組みをのぞいてみてください。





