人の話が頭に入らない原因は2つ|容量と状態を整えれば脳は自然に聞ける

人の話が頭に入らない原因は2つ|容量と状態を整えれば脳は自然に聞ける

会議で上司が話している。うなずきながら、次に何を言おうか考えている。気づけば、今聞いたはずの指示がもう思い出せない。

家族の話も、同僚の相談も、右から左に抜けていく。そんな自分に「どうしてこうなんだ」と落ち込んでいるなら、まず原因を正しく知ってください。

これは、能力の問題ではありません。人は聞いた話の半分以上を、わずか数日で忘れる生き物だからです。

この記事では、話が頭に入らない本当の原因を、容量状態の2つに分けて整理します。そのうえで、今日から変えられる聞き方をお伝えします。

ManaBeラボ 浦地純也
  • 株式会社ManaBeラボ代表取締役
  • 中学校、高等学校理科教員免許
  • 国際ジェネラティブチェンジ協会ジェネラティブトランス修了資格
  • カリフォルニア大学発祥の心理学指導者資格

2013年、高知大学で理科教員免許を取得し、公立の高等学校で2年間理科教師として働く。その後速読に感銘を受け愛知県で速読教室と学習塾を開校。

その後、スタンフォード大学心理学博士のギリガン先生と出会い、「瞑想状態×速読」を用いた新しい速読メソッド【GSR(Generative Speed Reading)】をワールドクラスパートナーズ株式会社と開発。

2019年には、「人生を変える速読法 GSR」を出版。2025年までの10年間で44,000人以上への速読指導の実績。現在もオンラインで全国の人々へ向けて活動中。

目次

人の話が頭に入らないのは自然な脳の反応

人の話が頭に入らないのは自然な脳の反応

会議の後、指示された内容を思い出せない自分に、もしかして頭が悪いのでは?と不安になったことはないでしょうか。

人の話が頭に入らないのは、能力の欠如でも、めずらしい異常でもありません。むしろ、脳の設計としてごく自然な反応です。

脳は聞いた音のすべてを処理していない

騒がしいパーティー会場でも、誰かが自分の名前を呼ぶと、なぜか気づきます。反対に、興味のない会話は、すぐそばで話されていても記憶に残りません。

これは心理学で「カクテルパーティー効果」と呼ばれる現象です。1950年代、心理学者コリン・チェリーが示しました。

脳は、耳に入る音のすべてを均等に処理しているわけではありません。注意を向けた一部だけを選び取り、それ以外は最初からフィルターにかけています。

会議中に相手の話が抜けるのも、同じ仕組みの延長です。脳がサボっているのではなく、正常にフィルターを働かせているだけなのです。

『聖徳太子は複数の人の悩みを同時に聞いて、すべて理解した』なんていう逸話もありますが、脳科学的に言えばそれはほぼ不可能ですし、むしろやろうとするべきではないんです。

意味を考えなければ話は記憶に残らない

ただ音として聞き流した話と、内容を考えながら聞いた話では、記憶への残り方がまったく違います。

1972年、心理学者クレイクとロックハートが提唱した「処理水準理論」では、記憶の定着は処理の深さで決まるとされています。

音として浅く処理しただけの情報はすぐに消えます。一方、意味を考えるという深い処理をした情報は、記憶として残りやすくなります。

相槌を打ちながらも、次の発言や別のことを考えているとき、脳は相手の話を意味として処理していません。声は聞こえていても、記憶には変換されていないのです。

人は聞いた話の半分以上を数日で忘れる

それでも「自分だけ極端に忘れっぽいのでは」と感じるかもしれません。

ミネソタ大学の研究者ラルフ・ニコルズは、聞いた話の記憶がどれほど早く失われるかを調べました。人は聞いた直後でも内容の半分ほどしか覚えておらず、2か月後には25%まで減ってしまうといいます。

これは特別なことではありません。人間の記憶は、そもそも聞いた情報のほとんどを保持するようにはできていないのです。

忘れることは欠陥ではなく、脳の標準仕様です。まずこの前提に立つことが、次の一歩につながります。

話が頭に入らないのは情報の容量オーバーが原因

話が頭に入らないのは情報の容量オーバーが原因

忘れるのが自然だとわかっても、それだけでは「なぜ自分は特に酷いのか」の答えにはなりません。

ここからは、話が入らない原因を具体的に見ていきます。原因は大きく2つに分けられます。

まず1つ目は、情報の容量の問題です。

一度に処理できる情報は3〜5個までしかない

人の脳には、情報を一時的に保持しながら処理する場所があります。ワーキングメモリと呼ばれる、頭の中のメモ帳のような働きをする機能です。

この容量には限りがあり、一度にホールドできるのは3から5個ほどとされています。

会議中に一言一句を漏らさず拾おうとすると、このメモ帳はすぐに満杯になります。細かい情報でいっぱいになった結果、全体を意味としてまとめる余力が残らなくなるのです。

「ちゃんと聞いていたはずなのに、結局何の話だったか思い出せない」の現象の正体は、ここにあります。

同じ容量オーバーは、会議の内容をメモに書き取ろうとするときにも起きます。議事録のメモが追いつかない原因と対策は、書く側の視点からこの現象を整理しています。

話す速度より速く考えられるから余白に別の考えが入る

もう1つ、容量を圧迫する要因があります。人が話す速度と、脳が考える速度の差です。

人が話す速さは、1分間におよそ125から175語程度です。一方、脳の処理速度はそれよりずっと速く、その2倍から5倍ほど処理できるともいわれています。

この速度差が生む余白に、次に何を言うか、別の予定、さっきのメールといった考えが割り込んできます。相手が話している途中から、次の返答を準備し始めてしまうのです。

相槌を打ちながら心ここにあらずになるのは、集中力が足りないからではありません。余った処理能力の使い道を、誰にも教わっていないだけなのです。

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話を受け止める余裕がない状態だと内容は素通りする

情報量の問題だけでは、説明がつかないこともあります。

疲れている日ほど話が入らない、同じ話でも聞ける日と聞けない日がある、という感覚です。

ここに関わるのが、2つ目の原因である状態の問題です。落ち着いて相手の話に耳を傾けられる状態かどうかが、容量とは別に効いてきます。

頭の中で別の考え事が動いていると話が入らない

脳には、何もしていないときほど活発になる回路があります。デフォルトモードネットワークと呼ばれる仕組みです。

過去の失敗や、まだ起きていない不安を、脳は勝手に呼び出し続けます。脳が消費するエネルギーの70から80%は、このアイドリング状態で使われているといわれています。

これは、パソコンのバックグラウンドで、不要なアプリが100個起動したままの状態に似ています。どれだけ高性能な機種でも、それではフリーズしてしまいます。

会議中にさっきの上司の言い方や夕方の予定が頭をよぎるのも、このバックグラウンドアプリが動いているからです。目の前の話に、意識を向ける余地が残っていないのです。

脳が疲れていると話を受け止める余力も残っていない

脳のノイズに加えて、そもそもの体力が切れている場合もあります。

人は1日に、最大で3万5000回も決断していると言われます。何を着るか、何を食べるか、メールにどう返すか。積み重なった決断のたびに、脳のエネルギーは少しずつ削られていきます。

夕方の会議で頭が働かないと感じるのは、朝からの決断でエネルギーを使い切っているからです。意志の弱さではなく、電池切れに近い状態です。

睡眠不足も同じ影響を与えます。睡眠が6時間に満たない状態は、酔っ払っているのに近い状態だという研究データもあります。エネルギーが足りない脳では、どんな聞き方をしても話は残りにくいのです。

この脳のエネルギー切れは、読書が思うように進まない原因にもなります。読みたいのに読めなくなる原因と読書を軽くする3ステップで詳しく扱っています。

容量と状態それぞれを整える聞き方

容量と状態、それぞれの原因がわかったところで、次に気になるのは対策です。

ここでは、今日からできる簡単な工夫を、容量向けと状態向けに分けて紹介します。

目的を先に1つ決めると話が頭に入りやすくなる

脳には、膨大な情報の中から必要なものだけを拾い上げるフィルターが備わっています。網様体賦活系、通称RASと呼ばれる仕組みです。

騒がしい場所でも自分の名前だけが耳に入るのは、このRASの働きによるものです。

このフィルターは、目的や問いを持つと、関連する情報を優先的に拾うようになります。会議に入る前に「今日は経費の承認だけ決めればいい」のように、拾いたい情報を1つ決めておくのです。

漠然と全部を聞き取ろうとするより、的を絞ったほうが、かえって多くの情報が頭に入ってきます。

一呼吸置いて聞くとノイズが減る

状態を整えるほうは、もっとシンプルです。呼吸に意識を向けるだけで、頭の中のノイズは静まります。

GoogleやAppleといった企業が、社員の生産性向上のためにマインドフルネスを本格的に取り入れているのは有名な話です。難しい理論より先に、効果が数字で示されているからです。

会議室に入る直前、5秒かけて息を吸い、10秒かけてゆっくり吐く。これを2、3回くり返すだけで構いません。

雑念が浮かんでも、無理に追い払う必要はありません。「今、別のことを考えていた」と気づいて、また相手の話に意識を戻す。それだけで、聞く余白は驚くほど広がります。

容量と状態を鍛える方法が「速読法GSR」

目的を決める、呼吸を整える。どちらも効果はありますが、あくまでその場しのぎの工夫です。

容量と状態、この2つを根本から鍛える方法はないのか。そう考えたとき行き着くのが、私が教えている速読法GSRです。

GSRは耳や目の訓練ではなく脳のコンディショニング

速読と聞くと、目を速く動かす訓練や、耳を鍛える訓練を想像するかもしれません。GSRは、そのどちらでもありません。

GSRがやっているのは、効率よく脳の処理速度を上げる、いわば脳のコンディショニングです。目や耳という入り口の器官ではなく、情報を受け取って処理する脳そのものを鍛えます。

だからこそ、読書だけでなく、資料作成、メールの返信、会議での受け答えなど、様々な場面の処理能力が一緒に上がっていきます。

速読が聞く力にまで効く理由

ここで、当然の疑問が浮かびます。速読はあくまで読む技術のはずなのに、なぜ聞く力にまで効くのか、という点です。

答えは単純です。話が入らない根っこは、目で読むときも耳で聞くときも、同じ脳の容量と状態にあるからです。

GSRのトレーニングでは、脳の緊張をゆるめ、リラックスしながら集中できる状態をつくります。これはジェネラティブステートと呼ばれる状態です。

この状態を土台にしながら、情報を効率よく処理する力を鍛えていきます。この土台こそが、読む場面にも聞く場面にも共通して働きます。

実際、GSRを学んだ受講生からは、動画を2倍速以上で聞いても内容が把握できるようになった、という声も上がっています。読む力を鍛えた結果が、聞く場面にも自然と広がっているのです。

こじつけに聞こえるかもしれません。ですが、速読という名前の奥にあるのは、情報処理の土台そのものを鍛えるトレーニングです。読むにも聞くにも、同じ土台の上で起きている変化なのです。

気になった方は、GSRがどんな手順で脳を鍛えていくのか、詳しい解説記事も見てみてください。

速読法GSR入門講座動画はこちら。最後まで視聴して頂いた方限定で通常5,000円のオンライン体験会が無料になります

話を聞く力が変わったGSR受講者の声

GSRで実際に聞く力が変わった受講者の声を紹介します。

共通しているのは、情報の取捨選択がうまくなったことと、感情に振り回されず落ち着いて話を受け止められるようになったことです。容量と状態、両方の変化が同時に起きています。

相手が伝えたいことを汲み取れるようになった

受講者の声_菱山博亮さん

菱山様に起きたのは、情報を大量に処理できるようになったことで、患者さん一人ひとりの声に耳を傾ける余裕まで生まれた、という変化です。

脳の状態が変われば受け止め方が変わる

状態の変化がとりわけ大きかったのが、税理士事務所でパートをされているY.I.様です。

以前は、体調を崩しがちなお子さんに、頭ごなしに怒ってしまうことがよくあったといいます。ですが、GSRを学んでからは、この子にとって何が最適かを、いったん落ち着いて考えられるようになったと話してくださいました。

夫に対しても、なぜそうしたのかと理由を聞けるようになり、感情的な言い合いになることが減ったそうです。反射的に怒っていた状態から、相手の話を受け止められる状態へと変わった実例です。

同僚の話が頭に残るようになった

容量の変化が際立っていたのは、商社で営業をされている山下様です。

以前は同僚との会話の内容がすぐに抜けてしまっていたそうですが、GSRを学んでからは、同僚の話がしっかり頭に残るようになったといいます。

感情的にならず、冷静に受け答えできる場面も増えました。情報を整理する力が上がったことで、会話そのものの処理能力が底上げされた例です。


3人に共通しているのは、情報を選び取る容量の力と、落ち着いて向き合う状態の力が、同時に底上げされていることです。これは特別な才能ではなく、誰にでも起こり得る変化です。

同じような変化が自分にも起こるのか気になった方は、GSRの全体像をまとめた解説記事もあわせてご覧ください。

人の話が頭に入らないことについてよくある質問

人の話が頭に入らないのは病気なのでしょうか?

多くの場合、病気ではありません。脳はもともと聞いた話をすべて記憶する設計ではなく、忘れることは自然な反応です。原因の多くは、情報の容量オーバーか、落ち着いて聞ける状態にないことのどちらかにあります。症状が強く続く場合は、無理せず医療機関に相談してください。

集中力がないせいで話が入らないのでしょうか?

いいえ、意志の弱さが原因ではありません。脳のノイズや疲労によって、話を受け止める余裕がなくなっているだけです。呼吸を整えるなど、状態を整える工夫で改善が期待できます。

発達障害や聞こえの問題が隠れていることもありますか?

まれに、APDと呼ばれる聴覚情報処理の障害や、ADHDなど医学的な要因が関わっている場合もあります。ただし多くの人には当てはまりません。日常生活に強く支障が出ている場合のみ、自己判断せず医療機関に相談することをおすすめします。

年齢のせいで聞く力が落ちているのでしょうか?

年齢だけが原因とは限りません。脳は何歳からでも変化できるとされており、聞き方や状態づくりを見直すことで、年齢に関わらず変化を実感しやすくなります。

話しながらメモを取れば解決しますか?

メモ自体は有効ですが、全部を書き取ろうとすると容量オーバーが悪化します。要点だけを拾うつもりでメモを取り、細部より全体の流れをつかむ意識を持つと効果的です。

会議のような複数人の会話が特に苦手なのですが?

複数人の会話は、脳がより多くの音声を選別する必要があり、負荷が高くなります。事前に「今日は何を持ち帰るか」という目的を1つ決めておくと、必要な情報を拾いやすくなります。

まとめ

人の話が頭に入らないのは、能力が低いからでも、気合いが足りないからでもありません。

原因は、情報を選びきれない容量の問題と、落ち着いて向き合えない状態の問題、この2つに分けられます。

容量には、目的を1つに絞ること。状態には、一呼吸置くこと。どちらも今日から始められる小さな工夫です。

この2つを根本から鍛える方法として、私は速読法GSRを教えています。読むためだけでなく、聞くという場面にも、同じ土台が生きてきます。

聞いた話が入らないと落ち込んでいたこれまでの自分を、責める必要はもうありません。まずは今日、目的を1つ決めて会議に臨むことから始めてみてください。

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