記憶とは|記憶の種類・しくみ・脳での処理を1記事で整理

記憶とは|記憶の種類・しくみ・脳での処理を1記事で整理

昨日読んだビジネス書のポイントを、今朝にはもう思い出せない。なのに、10年前に流行した曲のサビは、今でも口からするっと出てくる。

この「記憶のムラ」には、れっきとした理由があります。記憶は1種類ではなく、保持時間も仕組みも異なる複数のシステムが脳の中で動いているからです。

この記事では、記憶のしくみ(覚える→ためる→思い出す)と記憶の種類(時間軸・内容軸の分類)を1記事で俯瞰します。全体像を知ることで、自分が「どこでつまずいているのか」が見えてきます。

ManaBeラボ 浦地純也
  • 株式会社ManaBeラボ代表取締役
  • 中学校、高等学校理科教員免許
  • 国際ジェネラティブチェンジ協会ジェネラティブトランス修了資格
  • カリフォルニア大学発祥の心理学指導者資格

2013年、高知大学で理科教員免許を取得し、公立の高等学校で2年間理科教師として働く。その後速読に感銘を受け愛知県で速読教室と学習塾を開校。

その後、スタンフォード大学心理学博士のギリガン先生と出会い、「瞑想状態×速読」を用いた新しい速読メソッド【GSR(Generative Speed Reading)】をワールドクラスパートナーズ株式会社と開発。

2019年には、「人生を変える速読法 GSR」を出版。2025年までの10年間で44,000人以上への速読指導の実績。現在もオンラインで全国の人々へ向けて活動中。

目次

記憶とは何か(記銘・保持・想起の3段階)

記憶とは何か(記銘・保持・想起の3段階)

記憶を「覚えること」だと思っている方は多いはず。でも正確には、記憶は3つの段階からできています。

記憶は「覚える→ためる→思い出す」の3ステップ

記憶のプロセスは、次の3段階に分けられます。

段階専門用語内容
覚える記銘(符号化)見た・聞いた情報を、脳が処理できる意味の形に変換して取り込む
ためる保持(貯蔵)変換した情報を脳内に保存しておく
思い出す想起(検索)必要なときに保存した情報を引き出す

この3つは独立したステップです。記銘ができていても保持の段階でこぼれることがある。保持できていても想起の手がかりがなければ思い出せない。

「記憶力が良い人」とは、この3段階のどれかが特に優れているか、あるいは全体がうまく連動している人です。

「覚えられない」の正体は3段階のどこかのつまずき

記憶力が悪いと感じるとき、実は問題の場所はバラバラです。

  • 記銘のつまずき:そもそも注意が向いていないと、情報が脳に取り込まれない。「さっき聞いたはずなのに覚えていない」は、聞きながら別のことを考えていたケースが多い
  • 保持のつまずき:取り込んだのに時間とともに薄れる。これが典型的な「忘れた」状態
  • 想起のつまずき:実は保存されているのに、引き出すための手がかり(キーワード・状況・感情)がないため出てこない。「あの人の名前、なんだっけ」と言いながら後でふと思い出す——あの経験は、まさに想起のつまずきが正体です

どこに問題があるかで、対策がまったく変わります。「覚えられない」を一まとめに悩む前に、どのステップで詰まっているかを確かめるところから始めましょう。

記銘の前提となる「集中できる状態をどう作るか」については、勉強に集中できない本当の原因と対策で詳しく解説しています。

記憶の種類①|保持時間で分ける(感覚・短期・長期)

記憶の種類①|保持時間で分ける(感覚・短期・長期)

記憶は保持時間によって、3種類に分けられます。入口の短い記憶から順に見ていきます。

感覚記憶(一瞬で消える入口)

目や耳から入ってきた情報は、まず感覚記憶としてほんの一瞬だけ保持されます。視覚なら約1〜2秒、聴覚なら3〜4秒という極めて短い時間です。

意識にのぼる前に処理されるため、本人はほとんど気づきません。感覚記憶のすべてが次の段階へ進むわけではなく、注意を向けたものだけが短期記憶へと移ります。

「目の前の会話を聞いていたはずなのに覚えていない」の多くは、感覚記憶の段階でそのまま流れてしまっています。

短期記憶(数十秒だけ・容量に限界)

感覚記憶から選ばれた情報は、短期記憶に移ります。保持できるのは数十秒程度。かつ、一度に保持できる量にも限りがあります。

よく知られているのが「マジカルナンバー7±2」——人が一度に保持できる情報のまとまりは、おおよそ5〜9チャンク(意味のかたまり)という説です。

電話番号を聞いてすぐに忘れる、会議でメモを取らずにいたら後でキーワードが出てこない——こうした状況は、短期記憶の容量と保持時間の限界によるものです。意図的に繰り返したりメモを取ったりしなければ、情報は数十秒で消えてしまいます。

短期記憶の特徴と鍛え方の詳細は、「短期記憶とは|鍛え方」の記事で詳しく解説しています。

長期記憶(数分〜一生・容量は無制限)

短期記憶の情報が整理・反復されると、長期記憶へと移行します。保持時間は数分から一生涯、容量は事実上無制限です。

小学校で習った九九が30年後も口をついて出てくるのは、長期記憶に格納されているからです。長期記憶に入ったものは、引き出す手がかりさえあれば、何十年後でも取り出せます。

短期記憶から長期記憶への定着のさせ方は、「長期記憶とは|記憶を定着させる方法」の記事でまとめています。

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記憶の種類②|内容で分ける(エピソード・意味・手続き)

長期記憶は「どんな内容が入っているか」でさらに細かく分けられます。この分類を知ると、勉強した知識がなぜ実務で使いにくいのかが見えてきます。

陳述記憶=言葉にできる記憶(エピソード記憶・意味記憶)

長期記憶の中で「言葉にして説明できる」種類を、陳述記憶(宣言的記憶)と呼びます。さらに2つに分かれます。

エピソード記憶は、経験した出来事を時間・場所・感情とともに保存する記憶です。「去年の誕生日に行ったレストランで食べたパスタ」のように、いつ・どこでという文脈が付いているのが特徴。感情が大きく動いた出来事ほど鮮明に残ります。

意味記憶は、知識や概念の記憶です。「パスタはイタリア料理だ」「水の沸点は100℃」のように、いつどこで覚えたかの付随情報は失われ、内容だけが残ります。学校で習った知識や、仕事で得た専門知識の多くはこちらにあたります。

非陳述記憶=体で覚える記憶(手続き記憶ほか)

「言葉にしにくい」種類の長期記憶が、非陳述記憶(非宣言的記憶)です。

代表格が手続き記憶です。自転車の乗り方、タイピング、スポーツのフォームなど、体で覚えたスキルがこれにあたります。何度やっても言葉では説明しにくく、体が勝手に動く——それが手続き記憶の特徴です。

そのほか、過去の経験がその後の処理を促す「プライミング」や、特定の刺激に反応する「条件づけ」なども非陳述記憶に含まれます。

「使える知識」にするには意味記憶にエピソードを足す

勉強した知識が実務でなかなか使えない——そう感じるなら、意味記憶とエピソード記憶の関係に注目してみてください。

意味記憶(知識)だけでは、「覚えている」と「使える」の間に距離があります。でも、その知識を「自分の仕事のあの場面で試した」「同僚に説明して腹落ちした」というエピソードと結びつけると、想起のきっかけが増えて取り出しやすくなります。

本を読んで終わりにせず、「この内容を誰かに話してみる」「1つだけ仕事で試してみる」を意識すると、知識とエピソードが結びつき、ぐんと定着しやすくなります。

ビジネス書の知識を仕事で実際に活かすための読み方は、ビジネス書を読んでも仕事に活かせない原因でまとめています。

記憶が脳に残るしくみ(海馬と固定化)

記憶のしくみを語るうえで欠かせないのが、脳の海馬という部位です。

新しい記憶は海馬を通って大脳皮質に保存される

日々の経験で生まれた新しい記憶は、まず海馬に一時保管されます。そこから時間をかけて大脳皮質(記憶の長期保存先)へと転送・固定化されていきます。このプロセスを「記憶の固定化」と呼びます(理化学研究所)。

海馬が記憶の形成に欠かせないことは、医学の世界で有名な症例によって証明されています。1953年、てんかん治療のために海馬の一部を摘出した患者H.M.(ヘンリー・モレゾン)は、手術後、知能は保たれたまま新しい長期記憶を作れなくなりました。目の前の会話がすぐに消え、数分前のことを覚えていられない状態が続いたのです。

海馬の詳しい働きと鍛え方は、「海馬とは|記憶を司る脳の部位・鍛え方」の記事でまとめています。

記憶は「インプット量×思い出す回数」で育つ

記憶に関する研究から繰り返し示されていることがあります。「思い出した回数が多いほど、記憶は強化される」という事実です。

どれだけ読んでも1回で終わりでは定着しにくい。逆に言えば、インプットの母数が多いほど、思い出すチャンスも増えます。同じ時間でこなせるインプット量を増やすことは、記憶の材料そのものを増やすことにつながります。読むスピードを上げる練習は、そのための選択肢の一つとして覚えておいてください。

速読でインプット量を増やすとはどういうことか、速読とは?|本物の速読の仕組みと見分け方でまとめています。

記憶についてよくある質問

記憶力と頭の良さは同じですか?

必ずしも同じではありません。頭の良さには、論理的思考力・判断力・創造性など様々な能力が含まれます。記憶力は知識を蓄える力ですが、それを組み合わせて応用する力は別のはたらきです。記憶力が高くても応用力が低い場合も、その逆もあります。

忘れることは悪いことですか?

一概に悪いことではありません。脳は意図的に不要な情報を整理・削除することで、重要な情報を見つけやすくしています。問題なのは「覚えておきたいものを忘れること」であり、忘れること自体は脳の正常な機能の一つです。

記憶はどこに保存されていますか?

長期記憶は大脳皮質の広い領域に分散して保存されています。海馬が記憶の形成を担い、その後、記憶の種類によって保存先が異なります。エピソード記憶は前頭前野・側頭葉、手続き記憶は小脳・大脳基底核などが関与するとされています。

短期記憶とワーキングメモリは違いますか?

はい、異なります。短期記憶が「情報を一時的にためておく箱」だとすれば、ワーキングメモリは「ためながら計算・理解・判断の作業も行う作業台」のイメージです。詳しくは「ワーキングメモリとは|鍛え方・低い原因」の記事をご覧ください。

まとめ

記憶は「覚える(記銘)→ためる(保持)→思い出す(想起)」の3段階からできています。「覚えられない」と感じるとき、どの段階でつまずいているかを知ることが、対策の出発点になります。

また、記憶の種類には保持時間による分類(感覚・短期・長期)と、内容による分類(エピソード・意味・手続き)があります。勉強や仕事で知識を使えるようにしたいなら、意味記憶にエピソードを結びつける意識が助けになります。

記憶の材料をもっと増やしたい方へ。読むスピードが変わると、同じ時間で吸収できる情報量がそのまま変わります。

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