オフィスの照明が、自分の席の周りだけ残っている。時計はとっくに20時を過ぎた。
「今日こそ早く帰ろう」と思っていたはずなのに。
残業を減らしたくて、タスク管理も優先順位づけも試してきた。それでも、退社時間はなぜか変わらない。
じつは、残業が減らない原因は仕事量の多さだけではありません。一日の業務時間が、ある作業にじわじわと溶けているからです。
この記事では、その正体と、残業を根本から減らす方法をお伝えします。
この記事の執筆・監修
浦地純也(うらち じゅんや)
速読メソッド「GSR」講師 / 株式会社ManaBeラボ 代表取締役

- 株式会社ManaBeラボ代表取締役
- 中学校、高等学校理科教員免許
- 国際ジェネラティブチェンジ協会ジェネラティブトランス修了資格
- カリフォルニア大学発祥の心理学指導者資格
2013年、高知大学で理科教員免許を取得し、公立の高等学校で2年間理科教師として働く。その後速読に感銘を受け愛知県で速読教室と学習塾を開校。
その後、スタンフォード大学心理学博士のギリガン先生と出会い、「瞑想状態×速読」を用いた新しい速読メソッド【GSR(Generative Speed Reading)】をワールドクラスパートナーズ株式会社と開発。
2019年には、「人生を変える速読法 GSR」を出版。2025年までの10年間で44,000人以上への速読指導の実績。現在もオンラインで全国の人々へ向けて活動中。
残業を減らす方法を試しても効果が出ない理由

残業を減らそうと、いろいろ工夫してきた方は多いはずです。
- やることリストを作る
- 仕事に優先順位をつける
- 便利なツールを導入する
それでも残業が思うように減らないなら、減らそうとしている対象がずれているのかもしれません。
じつは私自身、かつて残業に追われていました。高校教師をしていた頃は、朝7時に出勤して夜12時まで働き、土日も部活で休みなし。残業は毎月200時間を超え、心も体もボロボロでした。
当時の私も、原因は仕事の量が多すぎることだと思っていました。でも、本当の原因は別のところにあったんです。
残業の原因を仕事量の多さだけで考えていないか
残業が減らないとき、多くの人はこう考えます。仕事の量が多すぎる、人手が足りない、と。
たしかに、量が原因のこともあります。でも、量を理由にすると、打てる手は誰かに振る・断る・増員を頼む、くらいに限られます。どれも、自分ひとりではコントロールしにくいことです。
だから、量に注目しているかぎり、残業は自分の力ではなかなか減らせません。
ここで、視点を変えてみます。同じ仕事量でも、人によって終わる時間は大きく違いますよね。その差は、能力ではなく作業のスピードから生まれています。
見落とされがちな作業スピードという原因
同じ会議資料を読むのに、30分かかる人もいれば、10分で終わる人もいます。同じ内容のメールでも、すぐ書ける人と、何度も読み返して悩む人がいます。
一つひとつは小さな差です。でも、一日の終わりには大きな時間差になります。
作業スピードが速い人は、仕事量を減らしたわけではありません。一つひとつの作業を、速く片づけているだけです。
つまり、残業を減らすために本当に見直すべきは、仕事の量ではなく作業のスピードです。そして、そのスピードを最も大きく左右している作業があります。次の章で、その正体をお話しします。
残業時間の多くは読む作業に消えている

作業スピードを最も大きく左右している作業。それは、文章を読むことです。
意外に感じるかもしれません。でも、一日の仕事を振り返ってみてください。あなたの時間は、思っている以上に読むことに吸い取られています。
オフィスワークで毎日どれだけ文字を読んでいるか
朝、出社してメールをチェックする。チャットの未読を追う。会議の前に資料に目を通す。報告書やマニュアルを確認する。ネットで情報を調べる。
これらはすべて、文字を読む作業です。
オフィスワークの一日は、読むことの連続でできています。手を動かして何かを作る時間よりも、文字を読んで内容を理解する時間のほうが長い。そんな人も少なくありません。
メール1通、資料1枚は、たいした時間に見えません。でも、一日に何十回も積み重なれば、合計は数時間にのぼります。その大半が、あなたの読む時間です。
読むのが遅いほど残業が積み上がる理由
読むスピードが遅いと、その遅れは一日中、雪だるま式にふくらみます。
資料を読むのに手間取る。だから会議の準備が押す。メールを読み込むのに時間がかかる。だから返信が後回しになる。読む作業が少しずつ遅れて、夕方にはタスクが山積みになっています。
その山を片づける時間が、残業です。
逆に言えば、読むスピードが上がれば、この雪だるまは小さくなります。残業を減らす糸口は、ここにあります。
ただ、その前に確かめたいことがあります。なぜ私たちは、文章を読むのにこれほど時間がかかるのか。次の章で見ていきます。
読む作業に時間がかかる原因
文章を読むのが遅いのは、頭の良し悪しのせいだと思っていませんか。
そうではありません。読むスピードを決めているのは、能力ではなく読み方のクセです。そのクセは、大きく2つあります。
読む速度を縛る「内声化」というクセ
今、この文章を読みながら、頭の中で声が聞こえていませんか。一文字ずつ、心の中で音読するような感覚です。
これを「内声化」と呼びます。日本人のおよそ9割が、無意識にやっている読み方です。
内声化には、はっきりした弱点があります。読むスピードが、声に出して読める速さまでしか上がらないのです。人が音読できる速さは、1分間に200〜400文字ほど。どれだけ急いでも、この天井は超えられません。
問題はもう一つあります。頭の中で音読すると、脳の作業スペースがふさがってしまうのです。本来は文章全体の意味をまとめるために使う場所が、音読でいっぱいになる。
だから、読んだのに頭に残らない、読んでいると眠くなる、という状態が起きます。
内声化は、学校の音読教育で身についた習慣です。生まれつきの能力ではありません。クセである以上、変えられます。
全部を完璧に理解しようとする読み方
もう一つのクセは、書いてあることをすべて完璧に理解しようとする読み方です。
まじめな人ほど、この読み方をします。一文一文を取りこぼさないように、丁寧に追う。少しでも引っかかると、前の行に戻って読み直す。
一見、正しい努力に見えます。でも、脳の仕組みからは逆効果なんです。
細かい情報を一つずつ拾おうとすると、脳の作業スペースはすぐ満杯になります。すると、その資料が結局何を言いたいのかが、かえって頭に入りません。
前に戻って読み直す動きも、文章の流れをぶつ切りにして、理解をさらに遅くします。
完璧に読もうとするほど、時間がかかり、しかも頭に残らない。残業を生む読み方の正体は、この2つのクセだったのです。
残業を減らす鍵は読む速度を上げること
2つのクセが分かれば、やることは見えてきます。内声化をやめて、完璧主義の読み方を手放す。この2つで、読むスピードは大きく変わります。
残業を減らす最短ルートは、タスクを誰かに振ることでも、気合いで早く帰ることでもありません。一日でいちばん長く使っている読む時間そのものを、短くすることです。
声に出さずに読む「視読」に切り替える
内声化の解決策は、「視読」への切り替えです。
視読とは、頭の中で音読せず、文字を見た瞬間に意味を受け取る読み方のこと。「そんなことできるの?」と思うかもしれません。でも、あなたはもう毎日やっています。
たとえば、駅の案内表示。3番線、快速、次は新宿——こうした文字を、いちいち心の中で読み上げてから理解しているでしょうか。
会議で配られたスライドの見出しや、スマホに届く通知も同じです。多くの場合、見た瞬間に意味が分かっています。
これが視読です。特別な才能ではありません。すでにできていることを、資料や書類にも広げていくだけです。
富山大学の研究では、1日5分の内声化をなくすトレーニングを1週間続けただけで、読書速度が60%上がったと報告されています。
この変化を、毎日読んでいる資料やメールの量に当てはめてみてください。一日に取り戻せる時間は、決して小さくありません。
全文を追わず要点だけをつかむ
完璧主義の読み方には、要点をつかむ読み方が解決策になります。
仕事で読む資料は、すべてを均等に理解する必要はありません。必要なのは、結論と、自分の判断に関わる数か所だけ。残りは、流し読みで十分です。
コツは、読む前に問いを決めること。「この資料から、今日の判断に必要な情報を1つ見つける」。そう決めてからページを開きます。すると脳が探すものを意識し、必要な情報のほうから目に飛び込んでくるようになります。
最初の理解は、3〜6割でかまいません。まず全体の骨組みをつかみ、本当に必要な箇所だけを後から詳しく読む。この順番に変えるだけで、資料1枚にかける時間は確実に短くなります。
読む速度が上がると残業はこう変わる
読むスピードが上がると、毎日の働き方はどう変わるのでしょうか。残業が減るのはもちろん、それだけではありません。
同じ仕事量を短い時間で終えられる
いちばん大きい変化は、同じ仕事量を、より短い時間で終えられることです。
これまで30分かけて読んでいた会議資料を、10分で読み終える。午前中のうちに、メールの確認が片づく。読む作業が速くなると、その後の仕事も連鎖して前倒しになります。
しかも、速くなるのは読む作業だけではありません。読書は、見る・覚える・判断する・手を動かす、という脳の働きを同時に鍛えます。そのため、資料を作るスピードや、文章を書くスピードも一緒に上がっていきます。
私自身、速読を身につけたことで、教師時代の残業を1年で1,400時間カットできました。あれほど終わらなかった仕事が、夜9時には片づくようになったのです。
残業が減って生まれる時間と余裕
残業が減って戻ってくるのは、時間だけではありません。
定時で帰れる日が増えれば、家族と夕食をとれる。先延ばしにしていた勉強にも、やっと手をつけられます。何もしない時間さえ、取り戻せるのです。
そして、脳にも余裕が戻ってきます。長時間労働で消耗した脳は、家に帰っても仕事のことを考え続けます。残業が減れば、その消耗が止まる。読書をしている間は呼吸が深くなり、気持ちが落ち着くという研究報告もあります。
時間がない、気持ちに余裕がない——その2つが、同時にほどけていきます。それが、読むスピードが変わったときに起きることです。
読む速度を体系化した「速読法GSR」とは
ここまで、残業を減らす鍵は読む速度にある、とお伝えしてきました。では、その読む速度は、どうすれば身につくのでしょうか。
この、読む速度を上げるという取り組みを、仕事の情報処理に使えるかたちで体系化したもの。それが、速読法GSRです。
速読法GSRが飛ばし読みと違う点
速読と聞くと、ページをパラパラめくって眺めるだけの、あの映像を思い浮かべるかもしれません。「飛ばし読みでしょう? 仕事の資料でそんなことをしたら困る」と。
速読法GSRが目指すのは、その飛ばし読みではありません。
ページをめくるだけのデモは、文章を読んで理解しているわけではないからです。GSRは違います。
読む目的を、全部を完璧に理解することから、要点と骨組みをつかむことへ切り替える。そのうえで、速く、正確に読む。仕事で使うための読み方です。
GSRで読む速度が変わる仕組み
速読法GSRは、スタンフォード大学の心理学博士スティーブン・ギリガン先生らが開発したメソッドです。ある集中状態と、最新の脳科学を組み合わせています。
2019年には「人生を変える速読法GSR」として書籍にもなり、これまで44,690人以上が体験してきました。
「速くなれば、理解は雑になるのでは」と感じるかもしれません。
GSRが取り組むのは、脳の情報処理能力そのものを底上げすることです。処理する力が上がるので、速さと理解の両方を伸ばせます。
速いから理解が落ちるのではなく、処理が遅いからゆっくりしか読めない。GSRは、その根本に手を入れます。
プログラムは、6週間の短期集中で組まれています。だらだらと長く続けるほど挫折しやすいことが分かっているため、あえて短い期間に設計されているのです。
速読がどういうものか、もう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事でくわしく解説しています。

残業時間が変わった受講者の声
速読法GSRで読むスピードを変えた人たちには、共通点があります。仕事の量を減らしたわけではないのに、残業が減っているのです。
理由はシンプルです。読む速度、つまり情報を処理する速度が上がると、資料もメールも次々に片づいていく。一日の作業が連鎖して前倒しになり、定時までに終わる仕事が増えていきます。
実際に変化した受講者を紹介します。

とにかく忙しい、時間がないという毎日でしたが、劇的な変化がありました。それは、残業時間が毎月95時間だったのが20時間に減ったことです!さらに、以前は子どもや職員にイライラしていましたが、今では緊急なことが起こっても冷静に対応することができています。
ギリギリまで寝て、チャッと水を飲み、朝マックをするのが私の日課でした(笑)。そんな毎日から、早起きをして・瞑想と読書をし・朝食を作る。さらに余った時間で1日の計画ができるようになりました。これは奇跡としか言いようがありません。

本を読む速度が、GSR受講前と比べると119倍速くなりました。ただ速くなっただけではなく仕事に活かせるアウトプットもできています。個人的には、「速いスピード」で仕事をすることが自然にでき、生産性が上がったことが嬉しかったです。

読書した内容を「ただの思い出」に終わらせることなく、アウトプットまでできるようになりました。いまは、もっと読みたい!と好奇心が湧くようになり、読書をする時間も確保できています。
以前までは、ドラマの台本や映像を隅から隅まで見返し、とても時間がかかっていました。しかし、GSRをやってからは短い時間で要点を捉えるだけで周りからの質問にも答えられるようになった。
時間にゆとりができ心に余裕を持つことができました。
残業が月95時間から20時間に減った方。仕事のスピードが自然に上がった方。資料の確認に追われる毎日から、自分の時間を取り戻した方——変化のかたちはそれぞれですが、根っこは同じです。読む速度が変わったことです。
GSRを受講した方の読書速度は、中央値で20.68倍に伸びています。受講者の96%が、1冊10分で読んで内容を人に伝えられるようになりました。これは、特別な人だけに起きた結果ではありません。
残業に追われる毎日を変えたいなら、まずは速読がどういうものかを知ることから始めてみてください。
残業を減らす方法についてよくある質問
- 残業を減らすには、まず何をすればいいですか?
-
残業の多くは、資料やメールを読む時間に消えています。だからまず取り組むべきは、読む速度を上げることです。声に出さずに読む視読に切り替え、全文ではなく要点をつかむ読み方に変える。この2つで一日の読む時間が短くなり、同じ仕事量でも退社時間が前に動きます。
- タスク管理や時短ツールを試しても残業が減らないのはなぜですか?
-
減らそうとしている対象が「仕事量」になっているからです。同じ仕事量でも、作業スピードによって終わる時間は大きく変わります。特に、資料やメールを読むスピードは一日の業務全体に影響します。量ではなく読む速度に目を向けると、残業は自分の力で減らせるようになります。
- 速読を覚えると、内容を理解できなくなりませんか?
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いいえ。速読法GSRは、ページをめくるだけの飛ばし読みではありません。脳の情報処理能力そのものを底上げするため、速さと理解を両立できます。読む目的を、全部を完璧に理解することから要点と骨組みをつかむことへ切り替えるので、仕事で使える読み方になります。
- 読むのが遅いのは、生まれつきの能力のせいではありませんか?
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能力のせいではありません。読むのが遅い主な原因は、頭の中で音読する「内声化」というクセです。これは学校の音読教育で身についた習慣にすぎません。富山大学の研究では、1日5分の内声化をなくすトレーニングを1週間続けただけで、読書速度が60%上がっています。
- 仕事が忙しくてまとまった時間がとれませんが、速読は身につきますか?
-
はい。トレーニングは1日5分程度の短時間から始められます。長時間まとめて取り組むより、短い時間を毎日続けるほうが、脳は変化を起こしやすいことが分かっています。通勤前や昼休みのスキマ時間でも実践できるので、忙しい毎日の中でも無理なく続けられます。
まとめ
残業が減らないのは、あなたの能力が低いからでも、要領が悪いからでもありません。減らすべき対象が、仕事の量ではなく読む速度だった。それだけのことです。
オフィスワークの一日は、メールや資料を読むことの連続です。その読む速度を遅くしているのは、内声化と完璧主義という2つの読み方のクセ。どちらも、学校教育で身についた習慣にすぎません。
クセである以上、変えられます。声に出さずに読む視読に切り替え、全文ではなく要点をつかむ。読むスピードが上がれば、同じ仕事量でも、退社の時間は前に動きます。
私自身、毎月200時間を超える残業から抜け出せたのも、この読み方を変えたからでした。
このまま、ずっと残業に追われ続けるのかもしれない——そう感じているなら、まずは速読がどういうものかを知るところから始めてみてください。




